1.そもそもメディアとは?
「メディア」という言葉は、いろいろな意味で使われます。
■ユーザーが情報を受け取るための物理的介在物
印刷物(新聞/雑誌など)/視聴機器(テレビ/PCなど)
■ユーザーが受ける情報そのもの
記事/番組/webコンテンツ など
■コンテンツやサービスを提供する企業(媒体社)
■情報伝達手段・経路ごとの区分
紙(印刷)/電波(放送波)/インターネット(回線) など
メディアに関して扱うデータを見るときには、メディアという言葉がどういう意味や区分で使われているのかを意識して見ることが大事です。
例)メディアの影響力の指標として用いる場合のメディア接触時間
デバイス(スマホ)の利用時間とコンテンツ(テレビ番組)の視聴時間の比較だった場合、対象としての区分が違うため、判断に注意が必要。
また、特にインターネット広告での社会的意義を考える場合には、「メディア=媒体社(企業)」で考えるのが妥当です。
2.インターネットメディアの社会的意義
■インターネットメディア
(主に)情報プラットフォームやコミュニケーションプラットフォーム
「媒体社」と「ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)企業」という2つの側面があり、社会的に有意義なICT技術の提供を通して社会貢献をかかげる企業もあります。インターネット広告の優位性や魅力といった利点は、これらの企業に寄る部分が多く、インターネット広告の成長に最も貢献しています。また、それぞれの企業が独自の目的と社会的意義を持って、社会に貢献しています。
使命:「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにする」
検索行為とは人間のその瞬間のニーズを表しており、その瞬間を捉えて的確な広告表示をすることでスムーズな購買行動を促すことが可能になりました。この検索サービスの維持/発展のための収益手段として、検索連動型広告(リスティング)という新しい広告の形が生まれています。
使命:「世界をよりオープンにつながったものにする」
コミュニケーション空間をあらゆる人に提供するため、広告収入を基盤とした無料サービスの形態です。「いいね!」をクリックしたページなど、ユーザーのシグナルを基に関心を持っていることについて把握することで、1人ひとりに合わせた広告を提供しています。これらによって、個人間のコミュニケーションが劇的に変わり、世界中の人が繋がるようになりました。さらに強力な口コミ装置としても働き、サンプリングなどのリアルなプロモーション活動が、大規模にデジタル化されました。
ヤフー
使命:「課題解決エンジン」
技術力を背景に、ポータルサイトという概念を実現しました。
人が生き生きと生きる上で必要な情報をまとめたサイトは、生活の課題に向き合い、安全/安心なコンテンツを提供してきました。社会的意義に加え、最近では情報自体に対する責任を持つことで、情報メディアとしての社会的意義を果たそうという動きも起こっています。
3.情報メディアの社会的意義
情報メディア(パブリッシャー)
インターネットメディアの中でも、従来のマスメディアのような社会的に有意義な情報(ニュース/娯楽/教養などのコンテンツ)を届けることを目的とする。広告は重要な収益手段ではあるが、目的ではない。
一般的なパブリッシャーには、責任を伴って最低限の品質を担保することが求められますが、インターネットメディアの中にはパブリッシャーと言いつつも、広告費の獲得だけを目的とするメディアもあります。情報に対して責任や創造性がなくても、コピー&ペーストで簡単に情報を作れてしまうデジタルの世界ならではとも言えます。
4.インターネット上の情報メディアの特徴と課題
従来のマスメディアも基本的には情報メディアになります。
情報メディアとは、その価値や品質を通して視聴者/読者との間で、信頼感や安心感、嗜好性などの好意/好感があらかじめ共有されています。そのため、広告主や広告商品に対してそういった感情を抱かせることが期待できます。信頼/信用が重要な製品・サービスは、信頼感の高いメディアによって信頼のイメージを高めることができます。
インターネットメディア上のパブリッシャーには、これまでのマスメディアにはなかったインターネット特有の特徴があります。
特徴
■メディアとコンテンツの分離
基本的には自らの媒体上で情報を発信していますが、情報の中のテキストや画像、動画などを元のサイトから切り離し、他のwebサイト上でも表示する(フィード技術)ことが可能です。サイトの縛りを超えて記事やクリエイティブが幅広く閲覧・視聴されるため、フィード先から自社サイトに誘導してトラフィックを増やす、ということも可能になります。そのため、ポータルサイトやキュレーションサイトなどから情報メディアにこの機能が提供されるという、独自の構造が生まれました。
■アドサーバー
コンテンツの配信と広告を切り離すことで、閲覧数に関係なく配信数を調整したり、分離したりすることができます。これにより、媒体社が広告在庫を無駄なく効率的に販売できるようになりました。
■媒体社とバイヤーのビジネス上での分離
プログラマティック広告市場では、媒体社が市場にSSP(Supply Side Platform)などを通して在庫を供給し、バイヤーはDSP(Demand Side Platform)などを通して在庫を購入する、という独自のシステムがあります。
課題
■メディアのテイストを出すのが難しくなった
ポータルサイトやキュレーションサイトで閲覧/視聴するとき、ユーザーは記事元の媒体を意識していないかもしれません。また、さまざまなコンテンツが並ぶキュレーションサイトなどでは、独自性が薄れてしまいます。
■ユーザー×メディア/メシア×広告の関係性が薄れている
媒体とコンテンツが分離されていることで、それぞれの人に合った違う広告が表示されるということが一般的にも認識されるようになってきています。その人に表示されている広告商品が必ずしも人気商品とは限らない、あるいは媒体のテイストやコンテンツが気に入ったユーザーでも、広告がその媒体とは関連がない、ということが認識され始めています。
このような状況の中で、いかに広告ビジネスに活かしていくのか、ということが課題になってきています。