1.メディアと広告
インターネット広告業界には、パブリッシャーやプラットフォームなどのさまざまなメディアがあります。無料や安価で、高品質なコンテンツや便利なサービスを提供することで視聴者/読者/ユーザーという、言ってみれば社会に貢献していますが、そのコストを広告収入によって補っていることで成り立っています。逆に言えば、広告収入で補うという構造がなければ、こういったものは一部の富裕層しか利用できなかったかもしれないのです。
一方、広告主にとっては、広告は自社製品やサービスを広く的確に広め、売り上げを向上するためのものです。それでも、広告への投資をすることで社会的意義のあるメディアを支援し支えていることになり、間接的な社会貢献であるとも言えます。
広告主側も、「広告はメディア支援でもある」ということを再認識し、インターネットメディア側も、社会意義や目的をいまいちど考えて、品質やモラルの維持に努めることも大切なことです。
2.モラルの重要性
これまでにもご紹介してきたように、次々と誕生する新しい技術やこれまでのビジネスモデルを吸収しながら、インターネット広告は急速に発展してきましたが、反面で急速な進歩や変化には課題もつきものです。
歴史を振り返ってみても、科学や技術自体には善悪はありません。それを使う人間次第で、それらは有用にも害悪にもなるものです。インターネット広告においてもそれは同じです。その活用やビジネス構想をする際に、今後はさらに、その悪用される可能性についても考慮していく必要があります。その際に特に重要になるのがモラルや倫理ではないでしょうか。
3.ビジネスに対する変化
2000年代の始めは、世界的に利益追求が優先の時代でした。
アメリカを中心に金融市場が拡大し、日本でもバブルに沸いていた時代ですが、結果的に2008年にリーマンショックを引き起こし、世界恐慌に匹敵するような未曾有の大不況となりました。
リーマンショックの原因は、返済能力の低い人への住宅ローンと、それを組み込むリスクヘッジ商品だと言われています。本来は経済活性化のためのリスク資産を流通させるためのもののはずでした。それが自己利益追求が加速し、返済の見込みが全くない人にまで貸し付けるなど、借り手側と貸し手側ともに節度を失った利益追求に走ってしまったのです。
収益のみに目が行き、適正範囲を見極める意識(倫理)がなくなれば「モラルハザード」が生じます。そして、これはインターネット広告業界にも言えることです。リーマンショックが起こり、バブル崩壊後には、多くの人が経済やビジネスに対しての認識が変わったかもしれませんが、インターネット広告業界は、かつての金融業界のような爆発的な成長の真っただ中にいます。
企業したばかりの信用がまだ低い企業家やまだ評価のない新興のサイトなども、可能性を正しく評価して、育てることも必要です。ただ、インターネット広告業界でも、無差別/無分別な貸し付けの結果破たんした金融業界のように、利益だけに目を向け、無差別に誰でも参加できる状態を放置すれば、そのツケが回ってくるかもしれません。
4.企業の社会的意義とモラル
いま、世間の倫理判断基準はかなり厳しくなってきています。品質偽装や粉飾決算のような不正だけでなく、以前なら見過ごされてきたハラスメントや差別、倫理違反などにも、社会の非難が当然のこととして上がるようになりました。
リーマンショックを境にした意識の変化や、今後を担っていくそれ以降に社会に出た社会人など、以前の「株主利益最優先」「会社のために不正に目そむける」というような意識は、もはや通用しない時代に来ているのでしょう。