先日、「公正取引委員会がネット広告に規制を」という記事をニュースで見ました。
広告が出せなくなるのでしょうか?今後のネット広告はどうなるのか、教えてください。
1. 公正取引委員会が独占禁止法違反を指摘?!
先日、公正取引委員会がGoogle、Yahoo、Facebookに対して独占禁止法違反でないかとの指摘をするというニュースがありました。あたかも、Googleなどが独占禁止法に抵触しているかのように聞こえますが、そういうわけではありません。
たとえば、Googleは検索エンジンの基になっていて、検索においては唯一、独自の検索順位を表示させるという仕組みを持っています。このような洗練されたアルゴリズムを作るのは大変なことです。昔はYahooも独自のアルゴリズムを持っていましたが、現在は撤退し、Googleのアルゴリズムを使って、検索結果を表示しています。
その意味では、Googleが検索結果に関してはコントロールする力を持っているとも言うことができ、そのgoogleに対して独占禁止法に抵触する、という記事のようです。
実際には、その立場を利用して、たとえばユーザーに取引条件を一方的に変更したり、競合他社に取引の制限をするというようなことがあれば、独占禁止法の違反になるため注意してください、という指摘のとりまとめの示唆のようです。
2.Googleの代わりはあるのか?
ネット記事の文面では「Googleのような巨悪に対してコントロールされてはいけない」というような暗黙の主張を感じました。そのネット記事も、Googleの検索エンジンがあってこそ読まれているわけですが。。。
このGoogleの検索の仕組みを越えるものを作るのは、現時点では無理なのではないでしょうか。よっぽどの違う仕組みを使ったプラットフォームが登場し、それがとても便利だということになればまた別ですが、みんなが、情報を簡単に、しかも無料で検索できる仕組みを提供するというのは、とてもすごいことなのです。この「無料でいろいろな情報を検索をできる」ということ、さらに「企業としての収益を【広告】という形で得る」ということ、非常によくできた仕組みになっているのです。
普通に考えて、民間の企業がこのような仕組みを作ったとしたら「1検索30円」「月額検索し放題で1980円」でもおかしくはありません。日本の企業の発想ならそうなるのではないでしょうか。そこがGoogleとの違いであり、日本の企業と世界の企業の意識の格差を感じる記事の出方であったな、という気がします。
3.広告に影響はあるのか?!
記事の中には「実際に広告に影響が出る」ということが書かれています。
指摘された企業が、顧客の情報を勝手に悪用しているかのような記載がありますが、そんなことはありません。
広告は、検索を通じたCookie(検索を通じて貯め込んでいく情報)情報を元にしたユーザーの嗜好をデータとして集め、それを元に配信されています。興味・関心のあることに広告を絞り込む「ターゲティング広告」が行われてきたわけですが、世界的にこのターゲティング広告には問題があるのではないか、という指摘がされるようになってきました。現在Appleではこれを排除する機能がすでに搭載されています。Google自体も、2022年にはこの「サードパーティーCookie」と呼ばれる仕組みは廃止することを宣言しています。
みなさんがイメージしているかもしれないような詐欺的なものではなく、そもそもが広告主に対しての新しいサービスの提供として、インターネットらしい情報の使い方で絞りこんだ広告を出す、という面白い機能でもあったのです。ただ、世界的にも「少しやりすぎなのではないか」という流れになり、人の嗜好も個人情報の一部とする概念が出てきたことで控えようという動きになってきている、ということです。
4.IT関連の法整備が遅れる日本
日本では、「どのような線引きをすればいいのか」ということに関してうまく整理されないまま、特に遅れているのが現状です。ヨーロッパやEUなどでは、まず個人情報を規制するという流れが先にありました。実質アメリカ企業が主導の流れの中で、それに対抗するための仕組みが遅れているヨーロッパでは、機密事項に対しての懸念からそのような動きになったのではないでしょうか。
ネット広告自体を見てみると、ターゲティング広告に関しては今後は流れが変わってくるのではないでしょうか。もしかすると、ターゲティング広告自体がなくなるということもあるかもしれません。ただ、まだ何も発表はされていません。
とにかくまだまだネット広告のニーズは高く、ネット広告費はテレビ広告費を抜いているのではないか、という勢いです。ですから、ネット広告の勢いは当分衰えるとは思えません。大企業しか出すのが難しかったテレビ広告に比べ、個人でも広告が出せるネット広告にはまだまだ伸び代が見込んでいけるでしょう。
というわけで、それほど実際の広告に悪い影響はないと思っていいでしょう。