1.モバイル広告の登場
2000年は、モバイル広告元年とも言われています。インターネット広告は、PCからモバイルデバイスへの変遷によっても大きく変わりました。
1999年、NTTドコモがIP接続サービス「iモード」を開始しました。iモードでは広告が扱われるようになり、KDDIやJフォン(後のボーダフォン。ソフトバンクが買収)なども後を追ってモバイル広告に参入していきます。モバイル広告の初期は、携帯電話キャリアが主導となっていました。携帯電話向けの広告は、PC向けの広告と区別して「ピクチャー広告」と呼ばれていました。
当時のモバイル広告での1番の特徴は、携帯特有の特徴によるクリック率の高さです。携帯向けの広告は画面を占める割合が高く、カーソルが広告上を必ず通過するために目立ちやすかったのです。メールの着信時に音や振動があるため、メール広告のクリック率も高めでした。
ピクチャー広告の特徴
● PC向け広告と別規格
→機種ごとに画面の解像度が違うため、複数のサイズの入稿が必要。
● PCよりもサイズが小さく、画質も低い
● PC広告よりもクリック率が高い
● 広告をクリックした時のレスポンス選択
→webサイトへのリンク/音声通話へ切り替え/メールソフト起動
携帯電話は隙間時間の時間つぶしとして使われるケースも多く、肌身離さず持ち歩くため消費現場の近くにあることが、モバイル広告にとって大きな価値がありました。
2.世界基準のインターネットへ
通信回線の高速化やパケット定額制の普及なども後押しし、2009年にはモバイル広告費は1000億円を超えました。携帯電話先進国だった日本は、モバイル広告でも最先端だったのです。
2008年にApple社がiPhoneの国内販売を開始しました。スマートフォンの人気が高まり、2013年には、従来の携帯(フィーチャーフォン)の出荷台数を上回ります。それまで、国内携帯電話キャリア主導で日本独自の基準だった携帯は、世界基準の開かれたインターネットに移行していくことになります。
スマートフォン登場での変化
● ブラウザーよりもアプリ利用が中心→アプリ向けの新たな広告市場誕生
● PCサイト/モバイルサイトの境界がなくなる→インターネット広告でのPC/モバイルの区別が不要に
PCでのインターネット利用は減少し、モバイルへの移行が加速していきます。
2019年の広告各社共同の調査によれば、2018年ではインターネット広告に占めるモバイル広告費は約7割を超えました。超高速大容量や低遅延などが特徴の第5世代移動通信システム(5G)もすでに実用化された今、さまざまなものがネットワークでつながり、よりモバイルでのコミュニケーションが進んでいくでしょう。今後は新たなマーケティングや広告が登場することも考えられます。
3.これまでの進化から先を見通す
「日々進化しているインターネットの分野で、過去を振り返っても意味がないのでは」と感じるかもしれません。ただ、現状だけを見るのではなく、過去にどういう過程があって今に至るのかを理解することで、今後に生かせることがあるはずです。
例えば、今や検索エンジンの代名詞とも言えるGoogleも、世界最初の検索エンジンではありません。Google以前の検索エンジンは精度が低く、検索結果に対するユーザーの満足度は低いものでした。そこでGoogleは、信頼できるサイトからどれぐらいリンクされているのか、という指標を使ったのです。これにより、Googleはユーザーが求める検索結果の精度を高め、現在では多くのユーザーに利用されています。Facebookも世界最初のSNSではありませんが、その後の拡大はめざましいものになりました。
世の中にはうまく行くサービスもあれば、注目は高くても実際始まってみるとうまく行かないもの、一時は主流になりながら衰退していくものなどさまざまです。それぞれ、生まれた背景、発展にどのようなことが関わり、どんな障害があったのか、そしてどのように現在につながるのかを知ることで、今後のヒントが見つかるかもしれませんね。