1.消費を牽引している広告
日本の広告費が長期にわたって6兆円あまりで停滞している中で、この20年の間に急速に成長してきたインターネット広告は、16年あまりですでに1兆円と、注目される存在になっています。ただ、その認知度に比べ、その社会的評価はまだまだ追いついていません。
広告は、広告収入が注目されがちですが、経済成長に欠かせない消費活動全般を牽引するという役割で社会的に貢献していると言えます。経済の成長が社会を豊かにし、そしてその経済の成長のためには、生産性の向上が重要だと言われます。経済指標の1つとして、国内総生産(GDP)がよく取り上げられますが、「生産性を上げる」ということは、単に作業効率を上げて生産量を増やすということではなく、取引を効率化して取引量を増やすことだとも言えます。GDPを増やすためには、生産と同時に「消費」も増やす必要があるのです。
生産性に関してはAIなどの技術の発展で効率化が急速に進み、さらなるAIの進歩で、今後は人間が必要なくなるという意見もあります。ただ、人なしに消費が増えることはないでしょう。私たちがいま置かれている資本主義経済は、常に拡大し続けることが前提に成り立っています。「過剰にならない程度に常に消費を拡大する」ということに対して、広告が大きな役割を果たしています。
2.インターネット広告の力とは
「広告が消費を牽引している」ことの要素として、大きく2つあります。
①情報を、必要な人に迅速、適切に伝達して効率的/円滑な消費につなげる
インタラクティブでリアルタイム性のあるインターネット広告は、必要性を感じたときにすぐに気づきを与えて、スムーズな購買につなげることができます。検索連動型広告や詳細なオーディエンスターゲティング広告は、消費者が必要とするその瞬間を捉えるのに最適な手段です。企業側としても、競合の中で自社の製品やサービス情報が、いち早く適切な消費者に届くということは利点になるでしょう。
②情報をより魅力的に伝えることで、その製品やサービスへの欲求を喚起する
消費を拡大するためには、消費の流れの効率化とともに、需要や欲求という消費意欲そのものを生み出して拡大する必要があります。高価であるにもかかわらず人気のあるiPhoneの最新機種や、機能的には十分なスマホを新しい機種に買い替えるというような、消費者のより高次元な欲求に応えたり、潜在的な欲求や需要の喚起の力が必要なのです。
3.広告による需要喚起
それでは、広告でどのように需要喚起されるのでしょうか。
①優れたクリエイティブの訴求力
既存顧客には満足感、購入検討者には納得感を与える広告コピーなど
②広く伝える力
単にターゲットに達する確率を上げるということだけではなく、むしろターゲット以外にも伝わる力。製品やサービスの情報を世間に広く伝えることで、それが共通認識になり、自分では認識していなかったものを喚起する。
③広告メディアとの相乗効果
メディアのブランドと広告商品のブランドとの組み合わせが、広告の需要喚起の力を補強して高める
4.プレイヤーの社会的意義と目的
広告に関わるプレイヤーには階層があり、それぞれの持つ社会的な目的や意義が少しずつ異なります。
広告主(アドバタイザー)
主に消費者の前提になる製品やサービスを提供する企業。
消費者(取引先企業)にとって有意義な製品やサービスを開発し、提供するのが目的。
広告は、自社の製品やサービスの購買/利用を促すための手段の1つ。
広告会社(エージェンシー)
広告を通じて、社会にとって有意義な製品やサービスの情報を広く伝えることが目的。
広告主の意図や社会的意義を理解し、商品の優秀性や独自性を正しく魅力的に伝えることで、消費者の心を動かす。時にはそれが社会現象、文化の一端を担うことにも。
媒体社(メディア企業)
一般的 :有意義な情報コンテンツを制作し、提供することが目的。
インターネット:上記+有意義な情報通信サービスの提供も含む。
広告は、コンテンツサービスの提供・維持/継続のために必要な収益源。
広告配信(取引)プラットフォーム
インターネット広告特有のプレイヤー。
アドテクノロジー(広告技術)提供企業(DSP/SSP/DMPなど)
広告取引を効率化し、広告自体の消費促進のため広告業界にとって有意義な情報通信技術を提供するのが目的。
広告測定・調査企業
測定/調査を通して広告の価値や信頼性を担保することで、広告の流通促進が目的。
広告業界にとって信頼性の高い有意義なデータを提供することが社会的意義。