1.本当の意味や価値を理解する
今回からは、インターネットの歴史的変遷やマーケティングにおけるネット広告の位置づけなども踏まえ、インターネット広告を取り巻く現状や今後の動向や課題などにも触れていきます。
すでにベテランの方には一見単なる常識であるものもあるかもしれませんが、新たな視点や発見、見落としなどが見つかるのではないでしょうか。運用するだけで言えば、理解をしていなくても作業はできるかもしれません。ただ、初心者の方や実務として携わる方も、単に作業をするのではなく、本質や価値を理解した上で実際の作業をすることは、今後のさらなる運用にきっとプラスになるはずです。
2.プロモーションとは「広告宣伝」と「販売促進」
インターネット広告を考える上で、ここではプロモーションというものを主に2つに分けて考えてみます。
広告宣伝
1つは、企業・商品の価値や魅力を不特定多数に伝える活動です。
製品やサービスの企画趣旨、社会的価値、性能や品質などを社会に広く伝えることを目的とする活動であり、商品自体の価値を形成するためのものと言えます。製品やサービスの価値の周知や知名度、購買意識の向上などが目的なので、テレビ・新聞のようなマスメディア広告などがこれに当たります。
販売促進
もう1つは、「販促」などとも言われますがその商品の販売を促進する活動です。
訪問営業やテレホンアポイントメントなどの人的活動、カタログやパンフレット、ノベルティや試供品、ダイレクトメールやチラシ、店舗やサービスへの誘導を目的にした展示会やイベントなど、営業活動の延長線上にあるものです。
ただ、一般的に日本の会計上では明確な区分や定義はありません。マスメディアによるセールスプロモーションが行われる場合もあれば、ブランディングを意識したカタログやイベントなどもあります。プロモーションに関わる業界において、ある意味広告宣伝と販売促進の区分は暗黙の了解としてはありますが、必ずしも確立されているわけではありません。インターネット広告においては、この区分をあえて踏襲していなかったり、共有していない場合も多々あります。
この2つの比重は、企業の規模や業種によっても変わります。
メーカーやサービス企業などは、製品やサービスの価値を向上させる広告宣伝の比重が高くなり、販売や代理店などは、営業・販売促進の比重が高くなるでしょう。また、BtoB/BtoCなのか、企業相手なのか、個人消費者相手なのかによっても変わってきます。さらに、マスメディアに広告を出す企業は限られてきますが、DM/チラシなどによるセールスプロモーションなどは多くの企業が実施しています。
3.インターネットメディア
デジタル化されたコンテンツやサービスをインターネット通信を通して提供するメディア=インターネットメディア、と言えます。このインターネットメディアはさらに分類することができます。
情報メディア(パブリッシャー)
情報発信を目的として情報をデジタル化し、インターネットで提供するメディアです。
マスメディア本社が運営するものもあれば、インターネットのみで情報コンテンツを制作・編集をするメディアもあります。
情報プラットフォーム
ポータルサイト、キュレーションサイトなどと呼ばれたりもします。
情報メディアが制作・編集したものも含め、ネット上や現実世界のさまざまな情報を整理分類、あるいはユーザーごとにカスタマイズしたコンテンツを提供するメディアです。最近増えているECサイトなどもこれに分類されます。
コミュニケーションプラットフォーム
SNSやブログ、写真・動画共有サービスなどです。
ユーザー自身が作成・生成した情報を他者と共有したり、ユーザー同士でコミュニケーションを取る場を提供するメディアです。
その他のメディア
ただ、概算で見積もっても、実は日本のインターネットメディアの99%以上は、この3つの分類以外のwebサイトやアプリなどの「その他のメディア」なのです。企業、大学、学校、政府機関、各種団体から、ゲーム、ツール、個人サイト・アプリ、を含め、これらのその他のメディア上にも広告は出されることがあります。また、広告収益のみを目的としたサイト・アプリも存在します。
4.インターネット広告の定義
インターネットメディア上のプロモーション活動はすべてネット広告なのか?
JIAA(一般社団法人日本インタラクティブ広告協会)の定義では「媒体社が有償で提供する広告枠に拠出されるもの」としています。
これに沿うと、広告主自身の企業サイトや製品サービスサイト(オウンドメディア)はネット広告には入らない、ということになります。また、アフィリエイトサイトのような販売代行活動も含まれないことになります。一般的にはこれらも含む場合もあり、ここでは「インターネット上で行われる広告宣伝活動および販売促進活動のうち、オウンドメディア/アフィリエイトなどは含まないもの」ということにしておきましょう。
ただ、インターネット広告は、広告宣伝にも販売促進にも幅広く利用でき、第3のメディア広告とも言えます。現在では、前述した広告宣伝活動と販売促進活動を統合するべきだという考えが浸透してきており、その意味ではインターネット広告の利点は大きいでしょう。統合マーケティングという視点は重要ですが、目的達成を測るためには、あくまでも目的は広告宣伝にあるのか、販売促進にあるのかを明確にしておくことは大事なことなのです。