1.受け入れられるための環境とは
インターネットや技術の進歩に伴って、それらを取り巻く社会や環境も変化してきました。利便性や技術の進歩が優先されてきた初期のころから比べ、インターネットが浸透し、活用するユーザーや社会も成熟してきています。その一方で、これまでに見てきたように、その技術やすきまを悪用する手法での被害や、進歩の早さに追い付いていない法整備など、初期のころにはなかったさまざまな課題も出てきています。さらに、インターネット利用により収集されるデータの利用価値が認識されるようになり、その取り扱いについても課題があります。
インターネット利用で収集される膨大なデータは、今後もさまざまに活用されていくでしょう。ただ、そのデータの根本は大きな意味で個人情報であり、データの提供元の環境も考えていく必要があります。データを有効に、健全に活用するためには、社会全体でユーザーの権利や意思を尊重する姿勢が大切です。事業者への不信感を払拭し、法的、社会的に適切にデータを取り扱うためには、業界ガイドラインなどの民間の自主ルール、技術開発、自発的な制限など、データを活用した広告ビジネスが受け入れられる環境を整える必要があるでしょう。アドテクノロジーのように、進化スピードが速く複雑なビジネス構造では、民間の役割も重要になります。今後ますます、利活用する側と提供する側の信頼関係を作ることが大切になってくることでしょう。
2.データ利用の透明性
データを活用した広告ビジネスが受け入れられるためには、データ利用の透明性も重要になります。そのための取り組みも進められています。
● 認定された事業者が広告に共通のアイコンを表示し、広告の設定やオプトアウトに誘導する(インフォメーションアイコンプログラム/AdChoicesなど)
● 複数の事業者のオプトアウトを一括して選択できるツールの提供(アメリカ)/統合オプトアウトサイトの運営(日本) など
● プライバシーダシュボードの提供
● 同意管理プロバイダー(CMP)
● ユーザーの意思に基づいてデータを流通させる「パーソナルデータストア」
● 情報銀行の枠組み
プライバシーダッシュボード
ダッシュボード(管理画面)でユーザー本人が自らのデータの利用状況を確認可能。
利用の可否の選択/データの修正などが可能。
3.適切なデータの利活用
広告とは、好む好まざるに関わらず、基本的には一方的に情報を提供するものです。
ユーザーデータを利用した広告は、関心を持つ可能性の高いユーザーに効率的に届けるものであって、ユーザーが見たくない広告は減るにしても、見たい広告だけを配信する、ということではありません。
ユーザーが納得して受け入れてくれるためには、プライバシーへの不安がなく、適切な関連性があり、適度に配信がコントロールされているなどの配慮が大切です。そのためにも、適切にデータを利活用する必要があります。
ユーザー起点で考える
● ユーザーにとって分かりにくいデータ取得方法や利用の場合はわかりやすい説明
● 選択のための十分な情報と機会の提供
● 内容によっては適切な同意
● 利用の適切性の判断
掲載の場面を考慮する
● サイトやアプリを横断した同じ広告の頻繁な表示
● ユーザーが知られたくない事柄に関連した広告の表示
● すでに購入済みの商品をくり返し表示 など
たとえ適切な広告表示であっても、ユーザーの側にたった配信でない場合、不快感や不安、嫌悪感を起こさせてしまうこともあります。