1.インターネット広告によるデジタル化
いまや、マーケティングを考える際にデジタルテクノロジー抜きには進めることはできないでしょう。いつ頃から導入されたのかは諸説ありますが、1996年のYahoo!Japanの開設、それに伴うインターネット広告の本格化は、1つのきっかけと言えそうです。デジタル活用した最も身近な手段と言えばインターネット広告ですが、当初から特別な要素がありました。
3つの要素
①アドサーバーによるコンテンツと広告の分離
②リアルタイムでの情報収集と分析
③ハイパーリンクの活用
2.コンテンツと広告の分離
マスメディアでは、同じ番組/コンテンツを見ていれば誰もが同じ広告を見ることになります。テレビの全国ネット/ローカルの切りかえ、新聞の県版などで多少掲載が異なる広告はありますが、同じ地域であれば基本的には同じになります。
一方で、インターネット広告は、同じサイトやコンテンツを見ていても、ユーザーによって表示される広告は変わります。さらに、インターネットではユーザーが自ら選択して閲覧するため、同じ時刻に同じメディアを見ていても、人によって見ている記事やコンテンツがまったく違う、ということもあり得ます。
3.リアルタイムでの情報収集と分析
従来の広告とインターネット広告での大きな変化は「ほぼリアルタイムで情報が収集できるようになった」ということでしょう。
テレビのCMでも一部でリアルタイムに近い試みも始まっていますが、基本的にはリアルタイムで状況を把握できる体制ではなく、データの取得対象も偏っています。あるいは、新聞や雑誌ではおよその発行部数は把握できますが、それぞれの広告がどれだけ読者の目に触れたのかを見るためには、改めてアンケートなどを行う必要があり、全数を把握することも難しくなります。マスメディアでは、このようにどうしてもタイムラグが発生します。
一方でインターネット広告では、測定タグで配信やクリックされた時点のログの取得が可能です。そのため、ほぼリアルタイムで配信数やクリック数の全数も把握できます。テレビ通販などではリアルタイムの消費者の反応は見ることができますが、インターネット広告なら消費者が購買に到達する手前までの反応まで、細かく把握できます。
4.ハイパーリンク
Webサイトのテキストや広告、動画や画像に埋め込まれた、他のファイルやwebサイトページへの参照情報を「ハイパーリンク」と言います。クリックすることで、その指定された場所に飛ぶことができます。この機能で、広告を見たユーザーが広告をクリックすれば、広告主が自ら指定するwebページにユーザーを直接連れて行けるようになりました。
CMを見た消費者が、商品に魅力を感じて実際に店頭まで足を運んだとしても、実際に商品を買ったかどうかを測定するのは難しいものでした。訪れた店頭で商品を比較検討した結果、他の競合の商品や代替品を買う、ということも考えられます。
ハイパーリンクを使えば、消費者の商品への興味・関心が高まった時点で直接広告主の指定するページに飛ぶことで、商品を購入する可能性は高まります。インターネット広告においては、オフライン(ネットに接続されていない状態)での行動など、すべてを完全に把握できるわけではありませんが、これまで見ることができなかった消費者の行動の一部が見えるようになったのは大きな変化です。
5.データのリアルタイム活用
インターネット広告によって、広告主はこれまで以上のデータを活用できるようになり、消費者にとっては生活インフラがデジタル化され、さらに消費活動が活性化しました。マーケティングでのデジタル化は、それによって生まれるデータをリアルタイム活用することだと言えるのではないでしょうか。
インターネット広告の初期には、広告の配信数やクリック数などのシンプルなデータは収集できました。その後アクセス解析ができるようになり、リンク先のサイト内の行動データ(閲覧ページ/ページの移動経路/最終離脱ページ/滞在時間など)を統合的に分析できるようになりました。広告を見てから購入するまでの消費者の行動を、一貫して追うことができるようになったのです。このようなさまざまなデータを駆使することで、当初の設定から現状に合わせて設定を修正したり、想定していなかった意外な顧客層の発見などができ、施策の精度向上にもつながります。