1.進化する広告表現の技術
技術や取引方法などが注目されがちなインターネット広告の進化ですが広告フォーマットも進化しています。
初期のディスプレイ広告は、静止画やGIF形式の簡単なアニメーションが中心でした。
当時はまだナローバンド時代でインターネット回線の帯域幅が狭かったため(通信速度が遅い)、広告のサイズや容量には厳しい制限があり、ファイルを軽くする必要がありました。
ナローバンド時代のディスプレイ広告
● 画質が粗い/色数が少ない/動きが滑らかではない
● 広告表示までに時間がかかる、読み込み停止なども発生
→対策として代替テキストを一緒に入稿(ALTテキスト)
*ALTテキスト:画像が表示されない場合に、代わりに画像の目的や意味が理解できるように表示されるテキスト
ディスプレイ広告のクリエイティブを飛躍的に進化させたのは、その後登場した「Flash」と「インターネット回線のブロードバンド化」です。
アニメーション技術「Flash」
● ベクターイメージ(点の座標とそれを結ぶ線(ベクター、ベクトル)などの数値データをもとにして演算によって画像を再現する方式)使用の規格
● ファイルの容量を抑えながら、高画質で滑らかなアニメーションが可能
● 高度なインタラクション(ユーザーが特定の操作を行なったとき、システムがその操作に応じた反応を返すこと)を実現
● 動画配信にも対応
このFlashを利用したディスプレイ広告が2000年代に増え始め、2010年ごろまでには一般的な形式として普及しました。一方、2001年はブロードバンド元年とされ、この年YahooもADSLサービスに参入しています。2010年まで自宅のインターネット利用の約8割がブロードバンドになり、常時高速接続が普及、広告のサイズや容量の制限が緩和されていったのです。
急速に普及したFlashでしたが、その後動作上の負荷やセキュリティー問題により、プラグイン(ソフトウェアに機能を追加するためのプログラム)不要のHTML5が推奨されるようになりました。2010年後半には急速に下火になり、2020年にはFlashの提供サポートは終了予定です。
2.リッチメディア広告
Flashとブロードバンド化によって、表現力が豊かなディスプレイ広告である「リッチメディア広告」が登場しました。
◆エキスパンド広告:マウスポイントの動きに反応して拡大する広告
◆フローティング広告:webページのコンテンツ上を浮遊する広告 など
【プラス面】
- ブランディング目的の広告需要を掘り起こす手段
- クリック率の高さからダイレクトレスポンス目的の需要
【マイナス面】
- 媒体とクリエイティブの調整が煩雑
- ユーザビリティを阻害する
リッチメディア広告は大きく注目され需要もありましたが、次第に衰退していきます。
最近ではユーザビリティ(使い勝手の良さ)の保護や、より良い広告体験というのがさらに重要視されるようになっています。ポップアップ広告、突然音声が自動再生されるような広告は、業界でも非推奨されているだけでなく、一部のブラウザでは排除されるようになっています。
3.動画広告
リッチメディア広告を追うように登場したのが動画広告です。
2000年代前半には、動画コンテンツが少なかったためバナー広告枠に動画配信をする試みがありました。ただ、まだブロードバンドの普及率は低く、配信単価も高かったためあまり普及しませんでした。
その後、2005年のUSENによる「Gyao」、2007年のGoogleによる「YouTube」日本語版公開などで徐々に普及していきます。さらに、スキップができる動画広告、6秒の短い動画広告などのユーザーに受け入れやすいフォーマットの開発も後押しし、現在も市場はどんどん大きくなっています。
4.ネイティブ広告
最近の動画広告に並び成長しているのが「ネイティブ広告」(記事、コンテンツと同じフォーマットで表示される)です。
● インフィード広告:FacebookやTwitterのフィード(友人などの投稿の並び)にされる広告。注目されやすく、反応されやすい
● ニュースサイトの見出しのの並びに同じ形式で挿入される広告 など
*同じフォーマットで表示されるため、「広告」や「PR」の明記
→媒体と広告の信頼を守るために広告であることを明示
5.レスポンシブ広告
単一、または少数の原稿で、広告枠に合わせてサイズ・表示形式・フォーマットなどが自動で調整される広告です。小さな費用で大きな効果が期待できるような機会を逃さずに活用できるため、業務効率だけでなく、広告パフォーマンスも向上しました。
6.ダイナミック広告
商品カタログの情報やクリエイティブ素材を登録しておくことで、個々のユーザーに合わせた最適なクリエイティブを動画的に生成して配信する広告です。
技術の進歩により、ターゲットごとの広告クリエイティブのカスタマイズが可能になってきました。さらに行動履歴などのデータに基づいた高度なターゲティングが可能になったことから、さらに個々のユーザーに最適な広告を表示することが求められるようになってきています。今後も、AIと共にこの分野はますます進化していきそうです。