最近では、デバイスの複雑化、通信速度の高速化、それにともなう広告フォーマットの多様化、データ量の増大などにより、インターネット広告の指標と測定方法も複雑化しています。ここでは、それぞれの指標の定義や長所/短所などをいまいちど整理しながら、広告指標と効果測定方法の現状を見て行きます。
1.広告目的の考え方
広告の目的は、企業や商品・サービスの成熟度合いやプロダクトライフサイクル、さらにターゲットなどによってさまざまです。ただ、そもそも新商品と既存商品では、その目的が違ってきます。
新商品の目的
・その商品・サービスを消費者に知ってもらう
既存商品の目的
*プロダクトライフサイクルの段階によって方向性や比重が変わる
*商品・サービスによってターゲットや訴求内容が異なり、目的も違う
・消費者に対するリマインド
・興味・関心度の向上
・内容理解を深める
・購入意向を育てる
・リピート購入の促進
・新機能追加に対する認知向上
インターネットに絞った場合
*インターネットにおいては、比較的長期的なブランドの価値を作るための戦略と、比較的短期間で獲得成果を求める戦略、ということになります。
◆ブランディング目的
企業、あるいはその商品・サービスの認知向上や理解促進など、ブランドへの態度変容
◆パフォーマンス目的
企業の商品・サービスの直接的な購入や会員獲得などの行動変容
ただ、最近ではブランディング目的でも獲得成果を求めるケースなど、広告の目的と期待する成果にも変化が見られます。
2.広告効果の考え方
広告がユーザーに到達して、初めて効果が確認できる状態になるため、効果を確認する上で前提になるのは「広告が到達しているかどうか」です。広告の到達状況を正しく把握することが大事で、「到達」と「効果」はセットで考える必要があります。
インターネット広告では、双方向性という特徴から広告に対する反応が数値で、しかも全数で計れるため、「クリックする」というようなダイレクトな指標に重点が置かれてきました。ただ、これまでのメディアと同じように「認知効果=広告を認知したこと自体で得られる効果」も大切です。インターネット広告でも、認知効果の検証が行われています。
1.ブランドコミュニケーションメディアとしての「到達効果」
2.プロモーション装置としての「トラフィック効果」
3.販売チャンネルや刈り取り機能としての「レスポンス効果」
3.効率と効果の違い
効率と効果は、似たような言葉でもその意味合いは大きく違います。
広告投資をインプット、それに対する獲得件数をアウトプットして考えてみましょう。
「効率」:広告投資を減らし獲得件数を維持する
広告投資(インプット)に焦点を当てる
*パフォーマンス型の広告:得られる成果をより小さなインプットで獲得する
*効率の向上が大事
「効果」:同じ広告投資で獲得件数を増やす
獲得件数(アウトプット)に焦点を当てる
*ブランディング型の広告:インプットによって効果の最大化を目指す
どちらも目指す方向性は違うとしても、広告の配信量が大事になります。
◆ブランディング目的
→できるだけ多くのユーザーに広告に触れてもらう。多少効率を落としてもユーザー到達を拡大していくことが大事。
◆パフォーマンス目的
→どれだけ少ない広告投資で多くのクリックを得られるか。狙ったターゲットに効率よく広告を到達させるのが大事。
4.マルチチャンネルを含めた指標と測定方法
広告の指標と測定方法は、広告の進化とともに発展し、種類や方法も複雑になっていきていますが、広告の効果測定使われる指標は大きく分けて2つになります。
到達指標
・実際にどれだけ予定通りにユーザーに達したのかを測る
・リーチ(率/人数)、フリークエンシー など
効果指標(態度変容・行動変容)
・広告配信によってユーザーの態度変容や行動変容などにどれだけ影響があるかを測る
・クリック率、コンバージョン率、製品・サービスへの関わり など
ここで、もう1つ考えなければならないのが「マルチチャンネルでの測定」です。
広告を表示するデバイスも複雑になり、現在では1人当たり約3台のデバイスを持っていると言われます。これに合わせて、効果測定ツールも進化しています。
シングルチャンネル
*態度変容調査
:広告が到達した人がどれぐらいブランドへのイメージや態度を変えたか
*行動変容指標(CTRなど)/行動変容調査(コンバージョンリフトテスト)
:実際に行動がどれぐらい変わったか
マルチチャンネル
*「デジタル内のマルチチャンネル」
<到達指標>メディアをまたいだリーチ測定 など
<効果測定>態度変容調査・アトリビューション分析
*「オンライン・オフラインを絡めたマルチチャンネル」
<分析手法>マーケティングミックスモデリング
*シングルソースの調査パネル
同一ユーザーに対して、メディア接触や購買行動などの複数のデータの収集・トラッキング、アンケートの実施などができるサービス
到達指標と効果指標については、またさらに細かくご紹介していきます。