1.ビューアビリティ(視認可能性)の考え方
以前は、広告が配信されることでユーザーに情報が届いているとされてきました。最近では、広告の到達状況を示す上で「ユーザーの目に触れる場所に広告が表示されているかどうか」が重要視され、ビューアブル(視認可能)かどうかがより重要になってきています。
これまでのようなクリックやコンバージョンといった直接的な獲得効果が重要とされていた時期は、本来の到達数を表すインプレッション=配信数とすることも可能でした。インターネット広告の市場規模が大きくなり、認知/ブランディング目的の活用も増え、テレビ広告との相乗効果も期待されるようになってきている現在では、配信数よりも、より到達しているかどうかが求められるようになってきているからです。
さらに、テレビ広告などでは、実際にその広告が視聴されているかどうかまでは判断できないため、画面に番組や広告が表示/露出されたかどうかでカウントされています。一方で、インターネット媒体では、特定の広告メディアが閲覧されてもスクロールして画面表示されなければ到達したとまでは言えません。そこで、インターネット広告では「ビューアブルインプレッション(視認可能なインプレッション)を到達と同等の指標として考えるようになってきています。
2.ビューアビリティの条件と定義
4つの条件
定義
ビューアブルインプレッション測定ガイドライン(PC)
ビューアブルインプレッション
- 広告ピクセル(≒面積)50%以上
- ディスプレイ広告:視認可能な状態が連続1秒以上
- インストリーム動画広告:視認可能な状態が連続2秒以上
アメリカでは、メディア測定の認定機関であるMRC(Media Rating Council)により、ビューアブルインプレッション測定ガイドラインが決められました。さらに、モバイル版ガイドラインも公表されています。日本では、このガイドラインに準拠する形でビューアブルインプレッション測定ガイダンスが発表されています。(ただし、実際のビジネスの現場では、メディアや表示形式の特性の違い、広告効果に求められる基準の違いなどから基本とは異なる指標や取引が採用されていることもあります。)
3.ビューアブルインプレッション
ビューアブルインプレッションの内訳
(測定ベンダーにより計算定義/指標名は異なる場合あり)
【注】②のノンビューアブルインプレッションは、「配信はされているが、視認判定基準を満たしていない(0秒/0ピクセルを含む)」という意味で、一切表示がされていないのとは異なります。基準を満たしていないということが、広告効果がゼロであるということにはならないので、本当の意味での「ノンビューアブル」と区別する必要がありそうです。選定ベンダーによっては、これらを切り分けてレポートを出しています。
用語定義や確認目的で行われた測定では、「ビューアブルかどうかがそもそも測定不能」になったカウントが想定以上に大きかったという課題が出てきました。今後はこの改善策への取り組みが必要になってくるでしょう。
広告効果
広告効果は、ビューアブルと判定されるかどうかで一気に変わるわけではありません。
ディスプレイ広告のビューアビリティ判定基準「広告表示秒数1秒」に満たなかったとしても、広告効果はゼロではなく、1秒を超えて一定時間までは、秒数が伸びると広告効果は高まり、その後は一定になると考えられています。
ビューアブル率が高いほうが効果は高くなると言えますが、広告の表示秒数を長くすることも効果の向上につながります。2018年に実施された検証調査結果(PCデバイスにおおけるディスプレイ広告)では、以下のような結果が出ています。
- ビューアブル率が基準に未達でも、広告が画面表示されれば一定の認知効果やブランドリフト効果が期待できる。
- 基準を超えた場合、広告の最大表示面積や連続表示時間が効果に大きな影響がある。
- ノンビューアブルインプレッションの広告効果はゼロではないが、基準を超えたビューアブルインプレッションの効果はかなり大きい。
- ビューアブル率80%と20%の比較では2.7倍の広告認知の差。
- ビューアブル率が高くなれば、広告認知もそれに比例して高い。
ただ、技術的な困難さの問題で、モバイル広告や動画広告のビューアビリティの測定はされていないのが現状です。
4.ビューアビリティを加味した実際の取引
広告スペースのビューアブル率と取引相場(モデル)
とは言え、ビューアビリティは重要な到達指標ですが、判断基準の1つであり必ず取引指標に結びつけなければならない、というわけではないでしょう。ただ、ユーザービリティを考慮して広告掲載スペースの位置/サイズ/フォーマットを検討する、サイトの読み込み速度を上げて広告表示開始時間の遅延を防ぐなど、ビューアビリティを上げるための工夫をすることは大事で、実際に行われています。ユーザービリティを考慮してビューアビリティを上げることで、広告主/媒体、ユーザーどちらにとってのメリットにもなるでしょう。