1.運用型広告の登場
2012年以降、電通によるインターネット広告内対比に占める運用型広告の割合が発表されており、51%だった割合は2018年時点では8割にまで達しています。
運用型広告
掲載先の媒体、金額、掲載期間などを事前に確定せず、掲載を開始してからの運用によってそれぞれ柔軟に変更していく広告。一般的に広告主や広告会社には管理画面が提供され、広告の成果を確認しながら予算配分の調整やクリエイティブの差し替えなどが可能。
広告の成果を最適化させるための業務を行うことを「運用」と言います。
2.進化する「ディスプレイ広告」
運用型広告の分類が登場した2012年ごろは、運用型広告の中心は検索連動型広告でしたが、バナー広告などのディスプレイ広告も運用型に進化していきます。
インターネット広告の初期には、ディスプレイ広告というのは個別の媒体がそれぞれ広告枠を販売していました。それぞれ仕様が異なるため、広告主は媒体や掲載面を選んで広告枠を買い付ける、というものでした。この場合、キャンペーンの規模を大きくするには媒体の組み合せを考え、それぞれに広告の発注や入稿をしなければならず、負担が大きいものでした。媒体にとっても、広告在庫の売れ残りのリスクが高くなります。
そこに登場したのが「複数媒体の広告枠を束ねて販売し、サーバーから一括して広告を配信する」というアドネットワークです。広告主にとっては個別に選択する必要もなく、1度にキャンペーンを実施できます。媒体にとっても手間を省き、在庫の売れ残りのリスクが低くなったのです。2000年以前からあったアドネットワークは、ターゲティングや配信の最適化など、10年ほどの間にさらに進化していきましたが、広告目的に合わない掲載面、ターゲットへの配信を排除しきれないなど、課題も残っていました。媒体にとっても、広告在庫が安く買われることで利益性が低いのがネックでした。
そこで2010年ごろから注目されたのが、「アドエクスチェンジ」(多数の媒体やアドネットワークとつながる広告取引市場)です。ターゲットを指定し、CPM(1000インプレッション当たりの費用)を入札。広告枠の1インプレッションごと、リアルタイムでオークションが行われ、入札価格と広告のパフォーマンスの良し悪しで表示される広告が決まるようになったのです。
3.広告取引をめぐる環境の進化
さまざまな広告取引のチャンネルが台頭して行く中、これらを一括してさらに効率的に活用するためのプラットフォームも生まれました。
DSP(Demand Side Platform)
買い付ける側の需要側に向けたプラットフォーム。必要な広告だけを任意の価格で買うことが可能
SSP(Supply Side Platform)
広告在庫の収益向上を支援する媒体など供給側に向けたプラットフォーム。
多くの広告在庫をできるだけ高く売り、収益につなげることを支援。
RTB(Real Time Bedding)
リアルタイム入札による取引(DSPとSSPが直接つながる)
複数のプラットフォームによってリアルタイムに入札されることにより、広告主にとっては旧来の取引よりも透明性が高く、主体的に買い付けを管理することが可能になりました。媒体にとっても、広告在庫の価値が適正価格に反映され、収益に結び付くようになりました。
4.進化することで見える新たな問題
検索連動型広告と同じ入札の仕組みが取り入れられたことにより、ディスプレイ広告にも「運用」という概念が広がりました。ただ、自動化やシステムの進化が進んでも、人間が判断して運用すべきポイントは残っています。「広告の目的は、広告枠に広告を表示することではなく、ターゲットに広告を届けることだ」という、枠から人へ、という考え方がありますが、現在ではこの流れの新たな見直しの必要性や課題も出てきています
新たな課題
◆広告の仕組みに多数の事業者が複雑に入り組み、広告費がどの事業者にどれだけ配分されているのか把握するのが困難
◆「枠から人へ」を追求しすぎた掲載面の評価の不足
◆ターゲットに広告を届けるだけでなく、どのポイントにおいてエンゲージメントを高めるのか(+媒体の選定や枠の考慮)
◆ビューアビリティの把握
◆アドフラウドの排除
◆ブランドセーフティーの確保
これらの課題を解決しながら、より良く、効果的な広告の配信が期待されています。