Google広告の動的検索広告(DSA)が終了し、新しい仕組みであるAI MAXへ強制的に移行されることが決まりました。しかしこの移行スケジュールは途中で変更されており、しかも移行のタイミングが2つに分かれています。ネット上には古い日付のままの情報も多く残っているため、正しいスケジュールと今すぐやるべき準備を整理して解説します。
1.DSA終了は「廃止」ではなく「AI MAXへの置き換え」
「DSAが終了する」と聞くと、配信そのものが止まってしまうのではないかと不安になるかもしれません。しかし実際はそうではありません。これは廃止というより、AI MAXへの置き換えと考えるのが正確です。
つまり、何もしなくても配信自体は止まりません。DSAのキャンペーンが、ある日を境にAI MAXという新しい仕組みに自動で切り替わる、というイメージです。
AI MAXの正式名称は「検索キャンペーン向け AI 最大化設定」といいます。DSAがサイトの中身を読み込んで配信する仕組みだったのに対し、AI MAXはサイトの中身を読み込むことに加えて、ユーザーの検索意図までAIが読み取って配信する次世代の仕組みとされています。
ここで意外と勘違いされやすいのが、AI MAXはP-MAXのような別のキャンペーンタイプではない、という点です。今ある検索キャンペーンの中で、AI MAXという「設定」がオンに切り替わるというのが正しい認識になります。キャンペーンそのものは検索キャンペーンのままで、その中の機能が有効になる、という考え方が最も近いといえます。
そして、この「自動で切り替わる」という部分が、今回の最大の注意点です。
2.移行スケジュールは「9月組」と「2月組」の2つに分かれる
ここが今回もっとも正確に押さえておきたいポイントです。まずは大きな流れから確認していきます。
- 2026年4月15日:GoogleがAI MAXを正式版とし、DSAをAI MAXに移行すると発表。同時に新しいDSAの作成も一時できなくなった
- 当初のアナウンス:2026年9月に一斉移行の予定だった
- 2026年6月:Googleが方針を変更。広告主から移行準備にもっと時間がほしいという声が多かったことを受け、DSA本体の自動移行が2027年2月まで延期された
- 2026年6月15日:止まっていた新規DSAの作成が復活
この情報だけを見て「まだ先の話だ」と判断してしまうのが、今回もっとも気をつけたい落とし穴です。
延期されたのは、あくまでDSA本体だけです。一部の機能は予定どおり2026年9月に移行されます。整理すると、移行のタイミングは大きく2つに分かれます。
【9月組】2026年9月に移行(延期なし)
- 自動作成アセット(ACA)を使っているキャンペーン
- キャンペーン単位で部分一致(インテントマッチ)を設定しているキャンペーン
【2月組】2027年2月に移行(延期された)
- DSA本体のキャンペーン
さらに2027年1月にはDSAの新規作成が完全に終了し、2027年2月に残っているDSAが自動でAI MAXへ切り替わるという流れになります。
もしご自身が自動作成アセット(ACA)やキャンペーン単位の部分一致設定を使っている場合、期限は2027年2月ではなく2026年9月になります。
3.移行時期は「キャンペーンの種類」ではなく「使っている機能」で決まる
多くの人が見落としがちなのが、移行の時期は「DSAかどうか」で決まるのではなく、「どの機能を使っているか」で決まるということです。
自動作成アセット(ACA)は、DSAとは別の独立した移行トリガーの一つになっています。Googleが9月の移行対象として挙げているのは、DSA・自動作成アセット(ACA)・キャンペーン単位の部分一致の3つです。ACAはそれ単独で対象になっている、ということです。
つまり、通常どおりキーワードを登録して広告文を作成している普通の検索キャンペーンであっても、広告文の自動作成やキャンペーン単位の部分一致をオンにしていれば、2026年9月に自動的にAI MAXへ移行されます。「うちはDSAを使っていないから関係ない」と思っている方こそ要注意です。自動作成アセットは、気づかないうちにオンになっているケースも少なくありません。
もう一つ押さえておきたいのが、DSAを使っていて、かつ自動作成アセットや部分一致も一緒に設定しているケースです。この場合は完全に9月組となり、2027年2月まで待つことはできません。早いほうのタイミングに引っ張られる形で、9月に設定がAI MAXへ切り替わります。
逆に言えば、2027年2月まで待てるのは、自動作成アセットも部分一致も使っていないDSA単体のキャンペーンだけです。それ以外は、通常の検索キャンペーンであってもDSAのキャンペーンであっても、9月にAI MAXへ強制移行されることになります。
自分のアカウントを棚卸しするチェックポイント
- 自動作成アセット(ACA)をオンにしているキャンペーンの有無 → あれば9月組
- キャンペーン単位で部分一致を設定しているものの有無 → あれば9月組
- 上のどちらも使っていない、DSA単体のキャンペーンはどれか → それが2月組
そして最終的にもっとも確実なのが、管理画面に表示されるアップグレードの通知バナーです。この通知が出ている場合、上記3つのいずれかがアカウント内にある可能性が高いため、あらためて設定を確認しておきましょう。
4.AI MAXに移行すると有効化される3つの機能
AI MAXは3つの機能のセットで構成されています。
- 検索語句マッチング:検索意図でのマッチング
- テキストカスタマイズ:AIによる広告文の自動生成
- 最終URL拡張:AIによる遷移先ページの拡張
興味深いのは、移行のトリガーとなった機能によって、オンになる範囲がそれぞれ異なる点です。
- DSA本体が移行する場合:3機能すべてが有効化される。動的広告グループが標準の広告グループに変換され、これまでのURLのコントロールは維持
- 自動作成アセット(ACA)を使っている場合:検索語句マッチングとテキストカスタマイズの2つが有効化
- 部分一致を使っている場合:検索語句マッチングが有効化
つまり、DSAが丸ごとP-MAXのような別物になるのではなく、今の検索キャンペーンにAIの機能が段階的に組み込まれていく、というイメージが実態に近いといえます。
ここで最も注意したいのが、広告文を自動生成するテキストカスタマイズと、遷移先を広げる最終URL拡張が、どちらもデフォルトでオンになるという点です。放置しておくと、AIが自動で作った広告文が表示されたり、意図しないページに誘導されたりする可能性があります。
5.放置するとどうなるのか|「強制移行」の正確な意味
何もせずに自動移行を迎えた場合、一言でいえば配信の範囲が想定以上に広がる可能性があります。
AI MAXは検索意図を広く解釈し、広告文もURLもAIが自動的に調整する仕組みです。制御をかけないままだと、「こんな検索にも広告が出ていたのか」「知らないページに誘導されていた」といったことが起こり得ます。特に、指名検索まで巻き込んでしまうケースには注意が必要です。
あわせて、「強制移行」という言葉の正確な意味も押さえておきましょう。移行そのものは避けることができません。DSAのままずっと使い続けたいと思っても、それは不可能です。オプトアウト、つまり「移行しない」という選択はできません。
ただし、タイミングと設定は自分でコントロールできます。自主移行のツールを使えば、過去の成果データや学習履歴を引き継いだまま、自分のタイミングで手動で移行することが可能です。今回は期限に猶予ができたため、じっくりテストする時間もあります。放置して自動移行を待つよりも、期間中に自分で移行してコントロールを握るほうがよい、とGoogle自身も推奨しています。
6.今すぐやるべき4つの準備
具体的に何を準備すればよいのか、大きく4つに整理します。
過去の成果を記録しておく
移行すると、良くも悪くも数字が動くことがあります。そのときに比較できるよう、過去6ヶ月ほどのCPA、ROAS、CV数、検索語句の傾向を、今のうちに記録しておきましょう。移行後に成果が落ちた場合も、どういう傾向になっているのかという答え合わせができるようになります。判断の基準を作るための作業です。
除外キーワードと除外URLを整えておく
配信範囲が広がることが前提となるため、出したくない検索や、誘導させたくないページをあらかじめ除外設定しておきます。これが制御の要になります。指名検索を守りたい場合は、ブランド名の除外も検討しておきましょう。
ブランドの表記ルールを文書にしておく
AIが広告文を作る以上、おかしな表現をされては困ります。AI MAXには「テキストガイドライン」という、避けたい表現を指定できる仕組みがあります。使ってほしくない言葉をあらかじめ文書化しておきましょう。
いきなり全部移行せず、テストする
今回の延期で生まれた最大のメリットがここです。期限に猶予ができたため、管理画面の移行ツールを使えば、成果データや学習履歴を引き継いだまま手動で移行できます。さらに、既存のDSAとAI MAXを並行して走らせ、成果を見比べることも可能です。自動移行を待つよりも、自分のタイミングでテストしながら移していくのがベストといえます。
まとめ
今回はDSAの終了とAI MAXへの移行について整理しました。あらためて要点をまとめます。
- DSAは廃止ではなく、AI MAXへ置き換え。AI MAXは別のキャンペーンタイプではなく「設定」
- スケジュールは2つに分岐。ACA・部分一致は2026年9月、DSA本体は2027年2月に強制移行
- 移行時期は種類ではなく、機能で決まる。通常の検索広告でもACAがオンなら9月組
- DSAにACA・部分一致が乗っていれば、2026年9月になる
- AI MAXは広告文もURLもAIが自動調整(初期設定オン)。放置すると配信範囲が大きく広がる
- 今すぐ取り組むべきは、過去実績の記録、除外リストの整備、表記ルールの文書化、テスト移行の4つ
特にACAや部分一致を使っている方、そして「DSAは使っていないから大丈夫」と思っていた方は、一度ご自身のアカウント設定を見直してください。気づいたら期限が2026年9月だった、というケースは意外と多いはずです。
Google広告は設定をシンプルにする方向で取り組みが進められている一方で、内容はどんどん複雑になっています。だからこそ、自分のアカウントがどの条件に当てはまるのかを早めに確認し、余裕をもって準備を進めておきましょう。


2026.09.24

